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システム開発のプロジェクトを経験すると、極めて採算性の悪いプロジェクトにぶち当たることがあります。いわゆる「赤字プロジェクト」です。仕事でプロジェクトを進めるならば、普通は誰でもそのプロジェクトを黒字にしたいはずです。

ところが、プロジェクト個別の事情によりプロジェクトが結果的に赤字に終わってしまうこともあります。そのようなとき、自分の担当するプロジェクトが赤字になることによって「同僚や会社に迷惑をかけた」「このプロジェクトは失敗だ」などと落ち込んでしまう人がいるかもしれません。

しかし、ここであなたが落ち込むことはありません。プロジェクトの採算が赤字だったからと言って、それだけでプロジェクトが失敗したわけではないのです。

ここでは、プロジェクトの採算が悪化して赤字になったとしてもそのことがプロジェクトの失敗を示すものではないということをお話ししていきます。ここで述べる内容を理解することで、プロジェクトの結果に対する成功と失敗を正しく判断するのに役立てることができます。

採算が赤字でも、プロジェクトを終結させた意義はある

プロジェクトは、「コストの他に「スケジュール」「成果物の品質」「顧客満足度」などさまざまな制約や要求事項を満たすように進めていくものです。

プロジェクトの主担当者となるプロジェクトマネージャーや現場の担当者は、誰でもこれらの制約や要求事項を可能な限り満足してプロジェクトを成功させたいと思っているはずです。

しかしそのような中で、プロジェクトの採算が悪化して結果的に赤字になったというのはある意味仕方がなかった面があると思います。

その原因は、おそらく現場が一番良くわかっているのではないでしょうか。例えば、要件定義時に見えていなかったお客さまの隠れた要求事項があとから見つかり開発せざるを得なかった。そのような要求事項に対応するために開発コストが想定外に膨らんでしまった、などの理由です。

しかしそのようなプロジェクトの現場の状況を知ってか知らずかわかりませんが、プロジェクト採算が赤字になったというだけでプロジェクトマネージャーに対してしつこく責任を問う人がいます。

私の知っている会社でも、プロジェクトマネージャーに対してそのような態度を示す人がいました。しかし、プロジェクトを決して赤字にしてはいけない(すなわち予算に対するコスト超過をゼロにする)のならそのプロジェクトを始める前に決まっていなければならないはずです。

プロジェクトスポンサー」(通常は、プロジェクトマネージャーの上司)が、そのプロジェクトを始めるときにプロジェクトのリスク要因をすべて排除できていなかったということです。プロジェクトが赤字になったのは、プロジェクトスポンサーの責任でもあるのです。

そしてプロジェクトマネジメントの観点で述べるならば、プロジェクトの遂行中にコスト悪化がどの程度まで許容されるかを示す「コンティンジェンシープラン」を用意するべきでした。コンティンジェンシープランがあれば、そのプロジェクトはコストが超過する前に手を打てたかもしれません。

一方、システムを使うお客さまの立場で考えてみましょう。システム開発会社が、お客さまの業務に役立つ機能を採算度外視で作ってくれたのです。そのことは、顧客満足度向上に貢献したと言えます。

今回のプロジェクトは赤字でしたが、次の仕事をいただけるかもしれませんし以後の仕事で赤字を挽回できるかもしれません。そのように考えれば、単純に赤字=悪とはならないと思います。

そしてプロジェクトがスケジュール通りに進められたのであれば、お客さまのビジネス要求に応えたことになります。プロジェクトがこのように終結したのであれば、そのプロジェクトはコスト超過を除けばまずまず成功したと言えるかもしれません。

このように、採算が赤字だったとしてもプロジェクトを終結させたことには十分に意義があります。そして、システム開発会社として顧客満足度の向上に貢献し今後のお客さまとの関係維持にもつながったのだと考えるようにしてください。

プロジェクトの成功は、ステークホルダーが判断することである

そもそも、プロジェクトの成功・失敗はコスト・スケジュール・成果物の品質など個別事項の結果では決まりません。プロジェクトの成功は、コスト・スケジュール・成果物の品質・プロジェクトの品質・顧客満足度の観点で、プロジェクトの主要な「ステークホルダー」(利害関係者)によって判断されるものです。

プロジェクトの成功は、プロジェクトマネージャーや会社の同僚、または会社の上司が決めるものではないことに注意してください。

プロジェクトの成功については、プロジェクトマネジメント手法の国際標準を定めたPMBOK(Project Management Body Of Knowledge)ガイドに説明されています。一度参照されることをおすすめします。

ここまでで、プロジェクトの採算が赤字に終わったとしてもそれだけでプロジェクトが失敗したとは言えないことがおわかりいただけたかと思います。プロジェクトの成功は、成果物やプロジェクトの品質などさまざまな観点に基づいて主要なステークホルダーが判断することです。

そしてあなたがプロジェクトマネージャーになったならば、プロジェクトの遂行中は常にステークホルダーと良好な関係を維持してあなたの仕事ぶりをアピールしてください。

あなたが普段からそのようにしておけば、仮にプロジェクトでコストが超過したとしても恐れることはありません。コスト超過が発生したら、その理由をステークホルダーに説明して承認を得るようにすれば良いのです。

ステークホルダーは、ふだんのあなたの仕事ぶりを十分に認めています。そのことから、ステークホルダーは「プロジェクトは、コスト超過が起きたけれどもその他は万事順調に進んでいる」と思ってくれるでしょう。