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情報システムを導入するときは、納入先に応じてソフトのカスタマイズ(ソフトを改造してユーザーが使いやすくすること)を行うという特徴があります。したがって、システムの価格は案件ごとに個別に審議し決めていくことになります。

それでは、システム価格はどのようにして決めていったら良いのでしょうか。よく行われる方法は、「システムの製造原価をベースにして、販管費や一定の利益分を加えてシステム価格を決める」というものです。しかし、あなたの会社がいつもこのようなシステム価格の設定をしているのであれば要注意です

ここでは、システムの製造原価をベースにシステム価格を決めてはいけない理由についてお話していきます。ここで述べる内容を理解することにより、情報システムに正しい価格設定を行うための考え方が身に付きます。さらに、情報システムのビジネスに関する理解を深めることができます。

製造原価をベースにした価格設定とは

まず、製造原価をベースにした一般的なシステム価格設定の方法について簡単に説明します。システムの「製造原価」は、次の4項目の合計で表されます。

  • 材料費:「サーバー」「パソコン」「市販ソフトウェア」など外部からの買い物にかかる費用
  • アプリケーション開発費:ソフトウェアの開発費用
  • エンジニアリング費:システム設計や導入に伴う作業費用
  • 経費その他:プロジェクト遂行にかかる出張経費その他の費用

製造原価は、システム導入のプロジェクト進行に直接かかってくる費用です。そのため、「直接費」とも呼ばれます。一方、システムを販売するためには営業やプロモーション(販売促進)活動も必要です。それらの活動は、個別のプロジェクトによらずにかかる費用のため「間接費」と呼ばれます。

製造原価をベースにした価格設定とは、「直接費に一定の利益分を加え、プロジェクトの規模に応じた間接費を負担する」という計算のもとでシステム価格を決定するものです。

このようなやり方は、製造業での製品価格の設定を基本にしたものです。そのため、一見合理的でプロジェクトごとに一定の利益を見込める手堅いやり方のように見えます。

システム価格の設定には、ビジネス戦略が必要

システム導入のプロジェクトごとに、このような価格設定を行いながらビジネスを続けていくとどうなるでしょうか。結論から言うと、やがて会社が疲弊し利益を出し続けることが難しくなってしまいます。その理由は、会社内で以下のような状況が起こるからです。

  • システムを販売する責任を負う「営業担当者」は、自身の売り上げを伸ばすために「ソフトのカスタマイズを前提で、なおかつ価格を安く見せて」販売するようになる
  • システムを導入する責任を負う「プロジェクトマネージャー」は、製造原価を下げプロジェクトの利益を得ることばかりに注力するようになる
  • システムを開発する責任を負う「開発担当者」は、常にさまざまなカスタマイズ要求に対応させられる。そのため、ソフトの品質確保が難しくなる。やがて開発のモチベーションが下がる

上記のような活動を続ける結果、「社員が忙しく働いているけれども、利益が伸びていかない」「システムの魅力や付加価値が乏しくなる。その結果、ユーザーが離れていく」「ソフトの品質が悪い。そのため、いつもトラブル対応に追われて損失が大きくなる」ことにつながるのです。

このようなことになる原因は、システム価格の設定に問題があるからです。価格設定が、製造原価をベースにして機械的に行われています。そこには、「ビジネス的な戦略」がないのです。

それではどのようにしたら良いかというと、一つの方法は価格設定に戦略的重み付けをすることです。例えば、同じ時期に「A案件」と「B案件」があり同じ製造原価がかかることが見込まれるとします。A案件は、会社のビジネスの発展に大いに貢献できる分野の仕事です。

それに対して、B案件は会社のビジネスの発展につながるとは考えにくい案件です。その場合、製造原価が同じであってもビジネスを考えるならばA案件の方を優先しなければなりません

そこで、B案件の価格設定に「リスクプレミアム」を付けてシステム価格を押し上げるのです。または、A案件の価格設定では利益を度外視したものにして、後のビジネスで取り返す戦略にします。

そうすれば、製造原価が同じA案件とB案件の間に明確な価格差が生まれます。そして同時に、案件ごとの会社のビジネスへの貢献度も考慮されます。すなわち、システム価格にビジネス的な戦略を反映させるのです。

価格設定で取れる戦略は、他にもあります。例えば競合他社に比べて高付加価値であると認められるシステムに関しては、製造原価が安くてもシステム価格を高くするということも考えられます。

ここでお伝えしたいのは、「製造原価のことを考えずにシステム価格を決める」のは単なる無謀ですが「一律に製造原価をベースにしてシステム価格を決めるのは、ビジネス継続に当たって問題になる」ということです。

このように、製造原価をベースにして機械的にシステム価格を決めるのには問題があります。システム価格は、必ず「ビジネス的な戦略」を含めて決定するようにしましょう。そうすることによって、会社のビジネスが安定しお客様に喜ばれる高品質なシステムを作り続けていくことができます。