SAYA160312370I9A3675_TP_V

自然災害は、いつやってくるかわかりません。災害時にビジネスを継続する計画のことを「BCP(Bussiness Continuity Plan、事業継続計画)」といいます。最近は、情報システムにもBCP対策が求められるようになっています。

仕事で使う情報システムには、日常の業務に伴い膨大なデータが蓄積されます。そのようなデータを災害で失ったときの損失は、計り知れないものになります。そのため、情報システムにBCP対策を施すのには、とても重要な意義があります。

ここでは、情報システムにBCP対策を施す場合の設計方法についてお話ししていきます。ここで述べる内容を理解することにより、情報システムへのBCP対策について学ぶことができます。そして、情報システム設計全般に対する理解を深めることができます。

本番系サーバーのサブセットとしてBCP系サーバーを設計する

BCP系サーバーには、本番系サーバーと基本的に同じ機能を持たせます。ただし、BCPの要求仕様によっては必ずしも本番系のすべての機能を網羅する必要はありません。また、サブセット(部分的な機能セット)でも構わない場合もあります。例えば、「本番系サーバーが10年分のデータを蓄積しているならば、BCP系サーバーは6ヶ月分のデータを扱う」といった具合に部分的に設計します。

BCP系サーバーの性能は、「災害時の暫定運用で使用する」という目的のため、標準的なもので良いと思われます。ハイスペックなものは、ほとんど求められません。

本番系サーバーと物理的に別の場所にBCP系サーバーを設置する

BCP系サーバーは、本番系サーバーと物理的に別の場所に設置します。部屋を分けたり、フロアや建物を分けたりするのが一般的です。東京本社と関西支社など場所が遠く離れていれば、なお良いです。

BCP系サーバーと本番系サーバーが物理的に近い場合、災害時に両サーバーとも稼働に必要な電源とネットワークが確保できなくなる恐れがあります。そのため、両サーバーを近くに設置するのは避けるべきです。

本番系とBCP系で、データを同期する

業務システムのデータベースは、業務時間内において常に更新されます。そのため、データベースについて本番系とBCP系の同期が必要になります。同期のタイミングは、なるべくリアルタイムに行うことが望ましいです。しかし、完全なリアルタイム同期は複雑かつ取り扱いが大変面倒になります。

そのため、「準リアルタイムの同期(数分から数時間後に同期する)」、または「毎日夜間にバッチ処理を起動しての同期」などの方法もあります。これでも、多くの用途で実用に耐えます。BCP系サーバーの要求仕様(災害発生時から暫定復旧まで許容される時間や、データ更新頻度)によって、決定します。

また、同期するデータは「業務における更新情報」の他に「マスタデータ」(業務における更新情報の基礎となるデータ)「ユーザー情報」「動作のための設定情報」などもあります。これらのデータの同期についても、同様に考慮する必要があります。そうでないと、いざBCP系を稼働するときになって「データの同期が不十分なため、使い物にならない」といったことが起こります。

本番系とBCP系を切り替える仕組みを検討する

BCP系の普段の動作は、本番系とデータの同期を取りながら待機しています。そして災害発生など有事のとき、本番系とBCP系の切り替えによって、それまで陰に隠れていたBCP系が表に出て稼働します。そのため、本番系とBCP系の切り替えの仕組みについての検討が必要です。

本番系とBCP系の切り替えには、「手動でネットワークケーブルの抜き差しを行う」「LAN切り替えスイッチを使用する」などの方法があります。手動でネットワークケーブルの抜き差しを行う方式は、構築の手間がかかりません。ただし、災害時の切り替え手順をマニュアルにしておく必要があります。そうでないと、有事のときに担当者がどのように本番系とBCP系を切り替えたらよいかわからないといったことになります。

LAN切り替えスイッチを使用する方式であれば、多少の構築の手間と引き換えに切り替えの手順自体はかなり簡素化されます。この方式であれば、スイッチを切り替えるだけで本番系とBCP系の切り替えを行うことができます。こうして切り替え手順が単純になれば、切り替え時の動作テストもやりやすくなります。

このように、情報システムに対してBCP対策を施すには「BCP系サーバーの構築」「データの同期」「切り替えの仕組み検討」を行っていきます。本番系とBCP系を合わせると、機器が増えそれに伴って機器管理の手間も増大します。しかし、この手間の増える部分についてもBCPの一環としてシステム構築予算に組み入れておくことが必要になります。