-shared-img-thumb-YUKA150701098458_TP_V (1)

情報システムの開発は、一種の設備投資として行われます。設備投資の回収までの間、さまざまな場面においてユーザーに使われ続けることになります。それでは、ユーザーからのクレームがなく、満足して使ってもらえる情報システムを作るために、会社の情報システムの担当者は、何をしたら良いでしょうか?

ここでは、ユーザーに心の底から感謝されるような情報システムの開発に必要な考え方について、お話しします。

情報システム担当者の役割

良いシステム開発を行う考え方を学ぶ前に、情報システム担当者の役割を理解しておかなければいけません。これについて、下図に載せています。

図1:プロジェクト体制図

図1のプロジェクト体制図を見てください。情報システムの開発においては、通常、ユーザーチームの情報システム部門に所属する情報システム担当者が割り当てられます。

情報システム部門が発注側会社にない場合、企画管理、総務部門やユーザー部門の人が兼任で担当する場合もあります。

システムの仕様は、ユーザー側の業務担当とベンダー側の業務担当SE(システムエンジニア)が個別に打ち合わせして決定していきます。

情報システム担当者の役割は、ユーザー(自社内で実際にシステムを活用する人)とシステム開発ベンダーの間に立って、双方の意見を調整し、プロジェクトが円滑に進むよう協力することです。情報システム担当者は、どちらかというとプロジェクトチーム内では地味な存在になりがちです。ただ実際は、大変重要な役割なのです。

ユーザーの要求とベンダーの主張の狭間に立つ

自社で実際にシステムを活用する「ユーザー」に喜んで使ってもらえる情報システムを開発するには、情報システム担当者の働きが、最も重要なポイントになります。

情報システム担当者の中には、次のように考える人がいます。「実際の仕事は、社内で実際に業務しているユーザーが一番よくわかっている。システム設計は、ベンダーが一番よくわかっている。だから、自分は、いちいち設計のことに介入しないで、ユーザーとベンダーとで直接話してもらって、開発してもらえばいいだろう。」

または、情報システム担当者が、「責任感が強すぎる人」「管理志向の強い人」であることもあります。

こうなると、その担当者は次のように考えるかもしれません。「自分はユーザーとベンダーの間で行われるすべての打ち合わせに参加し、進捗や課題の発生状況を管理しないといけない。問題点は、すべて自分の責任においてベンダーのお尻をたたいて、やらせることだ」

しかし、これらのような考え方で情報システム開発を進めた場合、たいがいうまくいきません。開発が遅れたり、稼働納期に間に合わなくなったりします。または、何とか間に合ったとしても、その情報システムがユーザーに満足して使ってもらえないことが多々あります。

なぜこれらの考え方でうまくいかないかというと、いずれも、ユーザーの業務と情報システムの動作の間で設計段階においてギャップが発生し、しかもそのギャップがコントロールされないまま、情報システムが作られてしまうからです。

情報システムは、完成するまで目に見えません。そのため、ユーザーは情報システムの動作を開発段階で完全に把握することができません。したがって、開発においてはユーザーの業務と情報システム動作のギャップに着目し、絶えずギャップを埋める努力をしていくことが重要になるのです。

ここで述べたようなユーザーの業務と情報システム動作のギャップを埋める役割を担うのは、情報システム担当者になります。

つまり、情報システム担当者は、ユーザーと開発ベンダーの間に立ち、予算と時間の兼ね合いを見ながら、ユーザーの業務と情報システムの動作のマッチングを図れるよう、双方の意向を調整するという考え方を持たなければいけません

このとき、ユーザーとベンダーのどちらか一方に肩入れするのは良くありません。情報システム担当者は、ユーザーと同じ会社に属しますが、何でもユーザーの言いなりになってはいけません。ときには、ユーザー側を説得する場面も必要になるかもしれません。

なぜなら、ユーザーは自分たちの業務におけるプロであり、情報システム開発のプロではありません。ユーザーは、業務の具体的な事項を理解していますが、それをシステムの中にどう組み込めば良いのかは分からないのです。

一方のベンダーは、自社の導入しようとしている情報システムの動作は理解していますが、ユーザーの業務知識については素人レベルの場合がほとんどです。

そのような状況の中では、ベンダーにユーザーの仕事を十分に理解させ、ユーザー側の作業で問題になる部分については、ベンダーに問題解決を提案させることが重要になってきます。

進捗管理主体でやっていては人の不満につながる

先に、責任感と管理志向の強い情報システム担当者の例を挙げました。このような担当者の場合、そのやり方は現場に積極的に介入し、全体打ち合わせ/個別打ち合わせを問わず、すべての打ち合わせに参加します。そして、開発工程の進捗をすべて管理するというものになります。

一見、このようなやり方は正しいものに見えるかもしれません。しかし、このやり方でプロジェクトを進めた場合、ユーザー、ベンダー双方のワーキングの時間調整が難しくなり、ワーキングに取れる時間が減ってしまいます。

その結果、重要な問題解決が遅れたり、人の不満につながったりするのです。

ただ、システム開発のときにユーザーは次のように感じます。「個別ワーキングをシステム担当の都合に合わせないといけないので、なかなかワーキングの時間が確保できない。そのためにワーキングでの課題がいつも宿題事項になる」

「システム担当は進捗管理、スケジュールを優先するばかりだ。現場から要望を出しても一向に答えは返って来ない。現場のことを考えてくれていない」

一方、ベンダーは次のように感じているかもしれません。「システム担当の人は、管理のために何種類もの文書提出を要求してくる。そればかりか、ユーザーの無理な要求までベンダーに押し付けてくる。このようなことをされては、実際の開発が追いつかない」

このような状況では、開発の効率が落ちます。また、開発中に大きな問題が発生したときにも、ベンダーが正しく報告してくれなくなるかもしれません。これでは、プロジェクトはうまくいきません。

結論として、個別打ち合わせはユーザーと担当SEに任せっぱなしはいけません。しかしある程度までは任せなければダメということになります。

このように、ユーザーに喜んで使ってもらえる情報システム開発においては、情報システム担当者の役割がとても重要になります。情報システムへの理解とユーザー側、ベンダー側双方の主張への理解が求められますので、大変な作業になります。

情報システムの設計段階において、ユーザーの行う作業と情報システムの動作には、常にギャップが発生するものであり、修正していく必要があることを認識してください。