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あなたが、自社の情報システム開発を担当しているとします。そして、実際の開発作業をシステム開発ベンダー(システム開発会社)に委託しようと考えているとします。その場合、開発の候補となるベンダーに提案書を作ってもらうことになります。候補のベンダーが複数あるとき、それぞれのベンダーに提案書の作成を依頼します。

しかし、ベンダーから出そろった提案書を読むと、どれも自社の良いところが並べられていて、その中から1社を選ぶことが難しい場合もあります。そこで、ベンダーの提案書を審査する必要が出てきます。

ベンダーの提案書を審査するには、提案書のすみずみまですべてを理解する必要はありません。ここで述べるコツをつかめば、速く提案書を読みこなし、ベンダーを正しく選定する眼力が身につくでしょう。

提案書の構成を理解し、アピールポイントが書かれているか

提案書には、構成のパターンがあります。たいていの場合、

  1. はじめに
  2. 提案するシステムの特徴
  3. システム構成
  4. システムの詳細機能
  5. 保守サービス内容

となっています。「1. はじめに」には、自社の経歴や他施設への導入実績が書かれることが多いです。この部分は、自社の宣伝の要素が強いため、重要ではありません。

ベンダーに提案を依頼した段階で、あなたにはそのベンダーの話を聞く準備があるのですから、ここであらためて宣伝を読む必要はないと思います。むしろ、そのベンダーを知らない人向けに書いてあると思ってよいでしょう。

「2.提案システムの特徴」は、そのベンダーのアピールポイントです。アピールポイントを一度読んで、あなたの心に刺さるメッセージが込められているか、確認してください

もし、ここの記述にピンとこなかったり、自社の特長がただ羅列されているだけだったりした場合、その提案書はその後を読む価値がないかもしれません。

ただし、例外もあります。例えば、既存システムのリプレース案件のような場合です。リプレース案件とは、サーバーやパソコンなどのハードウェアが古くなって、システム機能はそのまま、新規のハードウェアに載せ替えることを目的とした案件のことです。

「提案システムの特徴」といっても、リプレース案件ではその目的が「既存システムの継承を低コストで実現する」ことが多いです。その場合、提案書でのアピールポイントが多少弱くなるのは、やむを得ないかもしれません。

なお、「提案システムの特徴」の内容に疑問があれば、ベンダーの営業担当者に連絡して提案書を修正させるか、直接話を聞くようにします。

「3.システム構成」「4.システムの詳細機能」は、あなたが提案書を熟読して内容をチェックするよりも、一度ベンダーに説明させた方が良いです

その理由は、システム構成や詳細機能というものはどんなに図や文字を駆使しても正確に提案書に表現することが難しく、提案書の作成者に補足説明してもらって初めて正しく理解できるものだからです。

「5.保守サービス内容」は、システム保守の期間やそのサービス内容が含まれます。保守サービスの内容は、ベンダーによって異なるので十分に比較してください。一般に、保守サービスが手薄いベンダーは、あまりシステムの品質も期待できません

ベンダーによっては、保守サービスの中に「定期的なシステム機器の動作状態監視」や「システムの不具合対応だけでなく、一定の条件下で仕様変更にも対応する」といった内容が含まれていることもあります。内容の充実した保守サービスを提案してくれるベンダーを選びましょう。

保守サービスは、システムトラブルが起きなければそこに支払った金額がまるまるベンダーの利益になります。つまり、一種の保険のようなものです。明確な原価の概念がなく、保守サービスの価格が決められています。したがって、保守サービスは、その金額とサービスの良さが必ずしも比例しないことを理解しておく必要があります。

情報システム開発の主旨の理解度を確認する

情報システムの開発は、人間の力によって行うものです。そのため、担当者があなたの考え方を理解しあなたに協力してくれるかどうかが重要になります。開発作業に入る前の提案時点では、ベンダーの営業担当者があなたの考え方を理解してあなたに協力してくれそうかどうか、よく話をして判断してください。

営業担当者があなたの考え方を理解してくれたからといって、必ずしもそのベンダーのシステムエンジニアが同じように理解してくれるとは限りません。

しかし、営業担当者があなたの考え方を理解しないのに、システムエンジニア(SE)の方が理解してくれることは、ありえないと思って良いでしょう。システムエンジニアの仕事は、基本的に営業担当者が請け負った範囲の作業をするようになるからです。

プロジェクトマネージャーかシステムエンジニアにも説明してもらう

多くのベンダーでは、提案や説明を担当する「プレゼンテーター」とシステム開発を担当する「プロジェクトマネージャーおよびシステムエンジニア」は別々の人に分かれています。これは、販売促進とシステム構築の実作業という役割の違いがあるからです。

販売促進がプレゼンテーターの役割であり、プロジェクトマネージャーおよびシステムエンジニアが実作業の役割を担っています。

したがって、あなたはプレゼンテーターの話だけで納得するのではなく、システム構築で作業を共にする予定のプロジェクトマネージャー、またはシステムエンジニアも交えて話を聞くことが重要です。

プレゼンテーターが自社の美辞麗句を並べてきた場合であっても、同時にプロジェクトマネージャーやシステムエンジニアにも話を聞いてください。プレゼンテーター、プロジェクトマネージャー、システムエンジニアの間に妙な温度差がないかどうか確認するのです。

ベンダーに質問し、納得できる回答が出てくるかを確認する

提案書の内容で疑問に感じた部分は、ベンダー(システム開発企業)に質問してください。営業担当者自身では技術的な回答ができないかもしれませんが、それでもその営業担当者がどれだけ社内の人を動かしてベストな回答を引き出してくれるか、さらにはちぐはぐなことを言っていないかチェックできます

ベンダーの内部では、営業とシステムエンジニアの間でしょっちゅう揉め事が起きている場合もあります。営業とシステムエンジニアではお互いの立場が違うため、仕事の範囲の解釈などで折り合いが付かないことがあるのです。これについては、営業と保守サービス担当の間でも同様です。

社内に揉め事を抱えたベンダーに開発を依頼してしまうと、プロジェクト進行中に問題が起きたとき、問題解決がスムーズに進みません。あなたが発する質問への回答によって、営業やシステムエンジニアなどの人たちの間で連携がうまく取れているかどうかを確認します。

このように、ベンダーの提案書を審査する方法を学ぶことによって、安心して付き合えるベンダー選びに役立てることができます。ここで選定したベンダーとは、システム開発および保守期間の間の長い付き合いをしていくことになります。ぜひ、納得のいくベンダー選びを行ってください。