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システムインテグレーター(システム開発会社、SIer)の情報システムに関する提案やプレゼンテーションを聞いていると、自社のソフトウェア製品の強みをアピールしてくる場合がよくあります。そのようなプレゼンテーションは、そのSIerの「製品開発力」や「技術力の高さ」を宣伝しています。

仕事で使う業務システムの開発をSIerに業務委託しようとするとき、一見このように「製品開発に強みを持つ」SIerに依頼した方が良さそうに思えます。しかし、実際には製品開発力を強みとするSIerには注意すべきだと言えます。

ここでは、製品開発力を強みとするSIerには注意しなければならない理由について説明していきます。ここで述べる内容を理解することにより、あなたがシステム開発においてSIerを選定する際の予備知識として役立てることができます。

製品開発は、労働集約型作業になる

まず、SIerにおける製品開発の実態について考えてみましょう。製品開発というと、一般的には「技術開発」のイメージが強いかと思います。製造業の製品開発においては、まだ市場にない新製品の開発のために何度も試作品を作っては実験を繰り返します。そして、最終的に良い製品に仕上げていきます。

しかしSIerでの製品開発は、上記と少し異なります。製品開発は、実際のところ「コンピュータープログラムのコーディング作業」になります。コーディング作業は、作業量の割に単価が低く長時間労働になるのが一般的です。

長時間労働になるということは、必然的に「労働集約型」「人海戦術」といったあまりイメージの良くない言葉が浮かんできます。このような労働条件を強いられている会社では、担当者が体を壊したり退職して交替になったりするリスクが高まります。

本当は経営者にしても開発者に過酷な労働をさせたくないはずです。しかし製品の価格競争力を維持するため、潤沢に開発者を確保するのは難しいのです。

つまり、製品開発が強い会社とは労働集約型の作業に多くの時間を費やしている会社です。そこには、ソフトウェア製品が本当に社会に役立つものかどうかのマーケティングやユーザーの使い勝手などの非機能要求に配慮される余地が乏しいのです。

過去の資産にしばられ魅力的な提案ができない

第二に、「ソフトウェア製品は過去の負の資産となってしまうリスクがある」ことについて考えてみましょう。どんなソフトウェア製品も、当然ながら開発投資が行われています。何年間にも渡って開発された製品は、累計の投資額が数千万円から数億円に達することも珍しくありません。

そのようなソフトウェア製品を持つSIerは、当然その製品をベースにしたシステムの提案を行います。しかし、システムに対するユーザーの嗜好は徐々に変わるものです。自社製品に強みを持つと考えるSIerは、そのようなユーザーの嗜好の変化を取り入れることが苦手です。そして、製品の軽微な変更やマイナーバージョンアップでしのごうとします。

いわば、強い製品を持つSIerは過去のソフトウェア資産にしばられてユーザーの要求に対して正しい提案がしにくくなるのです。その半面、製品開発の現場やユーザーと直に接しているシステムエンジニアはユーザーの嗜好の変化を肌で感じているものです。このままの製品開発を続けていてはだめだと薄々感づいています。

しかし、そのような声を吸い上げて業務を改善していく意識が高い会社でない限り現場の声が取り上げられることはありません。これは、経営的な判断によるものです。そのような経営判断が続くことにより、製品の進化のスピードがどんどん損なわれていきます。

そして、そのうち別の開発会社から新しいコンセプトを持つ製品が発売されたら、もう太刀打ち出来なくなるのです。すなわち、強みと思っていた製品が過去の資産となり、それに発想がしばられてしまうため、ユーザーに対して魅力的な提案ができなくなっていくのです。

システムを提案し構築能力の高い会社が優れている

ユーザーの声を吸い上げたり製品の導入設定を行ったりして使いやすいシステムを作るのは、システムエンジニア(SE)の仕事です。SEの仕事は、労働集約型では務まりません。ユーザーの業務をそこそこ理解していることが求められますし、コンピューターシステムを使ってもらうためにユーザーの要望に合わせて小回りの利いた仕事をしていく必要があります。

そのようなことから、やはりSIerの強みはSEのシステム提案や構築能力の高さに比重を置くべきだと考えられます。そこに製品の強みが加わればなお良いことです。しかし、多少製品に弱みがあっても最終的にシステム構築能力でカバーできることも多いのです。

また、製品開発を担当するエンジニアはソフトウェア開発を習得した人であれば比較的簡単に見つかり雇用することもできます。しかし、ユーザーの業務を理解しユーザー目線で使いやすいシステムを構築することができるSEはなかなか見つかりません。そのようなSEを育成するには時間がかかりますし、容易なことではありません

システム担当者は、SIerのこのような事情も考慮してSIerを選別する目を持つことが必要です。

ここまで述べたように、製品開発力を強みとするSIerには気をつけなければなりません。それは、製品開発の実態が労働集約型作業であり自社製品へのこだわりがかえって仇となることが多いからです。そして、SIerが強みと思っている製品が過去の資産となり、ユーザーが使いやすいシステムからかけ離れたものになっていることがあるのです。

SIerのこのような背景を理解した上で、後悔しないSIer選定を行っていきましょう。